アニメ制作市場、初の3000億円突破 過去最高を大幅更新

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劇場版アニメの相次ぐヒットと動画配信向けの好調が影響
株式会社帝国データバンクによる最新の業界調査によれば、2023年のアニメ制作市場の規模が初めて3000億円を突破し、過去最高を大幅に更新したことが分かりました。調査によると、2023年の市場規模は前年度(2757億8300万円)を22.9%上回る3390億2000万円に達しました。この成長には、劇場版アニメの相次ぐヒットと動画配信向けの制作案件の増加が大きく寄与しています。
劇場版アニメの記録的なヒット
2023年に興行収入140億円を超える大ヒットとなった『すずめの戸締まり』をはじめ、『君たちはどう生きるか』などの話題作が市場拡大に大きく貢献しました。また、2024年には『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』など、クロスメディア戦略を駆使した作品も期待されています。
動画配信市場の拡大
動画配信サービス(VOD)市場も過去最高の1652億円を記録し、過去10年で10倍に拡大しました。これにより、視聴媒体がテレビから配信プラットフォームに代替され、多様なアクセスが可能となりました。こうした背景から、アニメ制作会社の収益源も多角化しており、特にNetflixなどの大手配信サービスが巨額の資金を投入するケースが増えています。
フリーランスとの取引とインボイス制度の影響
2023年10月に施行されたインボイス制度により、フリーランスや個人事業主として働くアニメーターへの影響が懸念されています。調査によると、アニメ制作会社の約8割でフリーランスとの取引が確認されており、特に元請・グロス請の会社ではその割合が9割に達しています。現時点では取引解消などの動きは見られていませんが、フリーランスにとっての消費税負担増が課題となっています。
元請・グロス請と専門スタジオの二極化
アニメ制作市場の収益の多様化が進む中で、元請・グロス請と専門スタジオ(下請)の間で収益格差が拡大しています。元請・グロス請はIP収入やVOD収入の増加により、高収益を維持していますが、専門スタジオでは赤字割合が4年ぶりに4割を超えました。特に人件費や外注費の増加が、収益を圧迫しています。
海外市場の拡大と国内市場の展望
内閣官房の資料によると、日本のコンテンツ産業の輸出額は約4兆6900億円で、そのうちアニメは約3割を占めています。日本アニメは世界市場でのシェア拡大が期待されており、過去の名作アニメは引き続きキラーコンテンツとしての地位を保持しています。一方、国内市場ではシリーズ化したアニメ作品の劇場版に制作資源が集中し、新たな収益モデルへの移行が進んでいます。
感想と展望
2023年のアニメ制作市場が初の3000億円を突破したことは、日本のコンテンツ産業の堅調な成長を象徴しています。劇場版アニメの成功と動画配信サービスの拡大が市場を牽引し、元請制作会社の収益力が大幅に強化されました。しかし、フリーランスや専門スタジオとの収益格差が課題として残されています。これらの課題を解決しつつ、持続可能な業界発展を目指す必要があります。
出典元:PR TIMES