VTuberの企業活用方法とは?メリット・成功の鍵・導入ステップを徹底解説

「自社で制作した動画が再生されない」「若年層へのPR方法がわからない」――このような悩みを抱える企業担当者は少なくありません。従来の広告手法では注目を集めるのが難しくなり、新しいPR手段として注目を集めているのが、VTuber(バーチャルYouTuber)の企業活用です。
VTuberは、エンタメ領域にとどまらず、企業の広報・採用・商品販売など、ビジネスの領域でも大きな成果を上げています。
本記事では、VTuberを企業がどのように活用できるか、具体的な方法や導入のメリット、注意点まで徹底解説します。
なぜ企業は今VTuberを活用すべきなのか?
VTuber活用が増加している背景には、従来のタレントや広告にはない、以下の明確なメリットがあるからです。
若年層(Z世代・デジタルネイティブ)への圧倒的なリーチ力
VTuberファンの中心層は、テレビや紙媒体から離れ、YouTubeやTikTokなどのデジタルコンテンツに慣れ親しんだ10代後半〜30代前半です。VTuberを起用することで、この層へ親近感のある自然な形でブランドや情報を届けることができます。若年層への認知拡大や訴求強化をしたい企業にとって、有効な選択肢になりつつあります。
企業・商品のブランドイメージ向上と親近感
キャラクターを介した情報発信は、企業の堅さを和らげ、親しみやすさを演出する効果があります。また、配信や動画は「広告」ではなく「コンテンツ」として視聴者に受け入れられやすいため、企業メッセージをダイレクトかつ好意的に伝えることができます。
タレント起用と比較した炎上リスクの低減
実在の芸能人やインフルエンサーを起用した場合、プライベートでの不祥事が原因で企業イメージが損なわれるリスクは避けられません。一方、VTuberは「デジタルキャラクター」として活動しており、中の人と活動を切り分けやすいため、プライベート起因の炎上リスクを大幅に低減できます。
ファンによる拡散力(推し活文化)
VTuberファンは単なる視聴者に留まらず、推しの「支援者」「拡散者」として活動する傾向にあります。ファンによる切り抜き動画やSNSでの感想が二次的に広がるため、企業の情報が広告費をかけずにオーガニックに拡散されやすい点もメリットです。
企業におけるVTuber活用の具体的な3つの方法と成功の鍵
VTuberの活用は、目的に応じて大きく3つのアプローチに分けられます。それぞれの手法ごとに、成果を出すための重要なポイントを解説します。
用途に応じて最適な手法を選ぶことが成功の鍵です。
【活用方法1】広報・採用を担う「企業公式VTuber(バーチャル社員)」の運用
自社でオリジナルVTuberを制作し、企業の顔としてYouTubeやSNSで運用する、長期的なブランド構築に最も適した手法です。さらに、運用が軌道に乗れば、グッズ販売やチャンネル収益など副次的な収益の獲得も期待できるため、単なるPRだけでなく、事業全体の収益拡大にもつなげることが可能です。
| 成功の鍵 | 深掘りポイント |
|---|---|
| 戦略的な キャラクター設計 | 企業のコンセプト、事業内容、ターゲット層を完全に反映したデザインと詳細な背景ストーリー(例:入社経緯、夢)を設定する。単なるキャラクターではなく、「社員」としての役割や個性を持たせることが重要です。 |
| 継続的な PDCAサイクル | 公式VTuberの活動は長期的なブランド資産となるため、視聴データに基づき、配信内容やトーンを改善し続けることが不可欠です。この継続的な改善を通じてファンを育て、企業への愛着に繋げます。 |
| トレンド・ニュースの把握 | VTuber業界は日々進化しており、AI技術やメタバース連携など新しい動向が登場。専任スタッフが最新のトレンドを追い、コンテンツに反映することで、常に新鮮で魅力的な配信を提供できます。 |
| 専任スタッフの配置 | 公式VTuberの運用には、コンテンツ企画、SNS運用、データ分析など専門業務が多数存在。リアルタイム対応や効果的な運用のため、専属スタッフを配置することが成功の鍵です。 |
| 安全な運用体制 | 演者の選定・教育、炎上対策など、専門的な知見が必要となるため、リソースやノウハウがない場合は、初期段階から外部支援の活用を検討することも成功の近道です。 |
活用事例
茨城県公認VTuber「茨ひより」(自治体PR)
2018年に誕生した日本初の自治体公式VTuber。観光や特産品の紹介、eスポーツ大会のMC、献血や選挙啓発など幅広く県の魅力を発信。YouTube「いばキラTV」は登録者18万人を突破(2025年10月時点)し、広告換算効果は10億円超と高いPR成果を記録しました。近年はAI対話機能を搭載した「AI茨ひより」としても活動し、自治体DXの成功事例として注目されています。
ロート製薬「根羽清ココロ」(バーチャル社員)
2018年6月に “ロートの日” を機に社員扱いでデビュー。実際にはスキンケア研究部門に所属しつつ、広報や商品プロモーション、健康啓発など幅広いコンテンツを配信。また、メタバース空間での体験型販促イベントにも起用され、新たな若年層との接点創出に成功しています。
【活用方法2】商品・サービスの販売促進、ライブコマースへの活用
VTuberを商品レビューや販売促進のホストとして起用し、エンタメ性の高いコンテンツの中で購買行動を促す手法です。
| 成功の鍵 | 深掘りポイント |
|---|---|
| 「広告感」を消す 企画設計 | 商品紹介やレビューを、ゲーム配信や雑談といったVTuberならではのエンタメコンテンツに自然に組み込む。一方的なPRではなく、視聴者との対話を通じて商品の魅力を引き出すことで、広告色を抑えた訴求が可能になります。 |
| 高い エンゲージメント | ライブ配信中に視聴者の質問に答えたり、コメントを拾ったりすることで、一体感を生み出します。これにより、商品への興味が「推しを応援したい」という熱量に変換され、購入意欲を高めます。 |
| データ分析に基づく効果測定 | ライブコマースの場合、配信中のコンバージョン率、視聴者の属性データなどを分析し、商品とVTuberの親和性や、効果的なプロモーションのタイミングを把握することが重要です。 |
活用事例
サントリー公式VTuber「燦鳥ノム」(自社製品の紹介を交えた活動)
2018年にデビューしたバーチャルキャラクター。“水の国”出身という設定で、「冷蔵庫からこんにちは!」を決まり文句に、飲料レビュー、歌、ゲーム実況、雑談など多彩な動画を発信。
チャンネル登録者は16万人超、総再生数は4,200万回以上(2025年10月時点)と、企業VTuberとしては高い認知とファン基盤を築いています。
「Huel × VTuber生配信レビュー」
Huelは、複数のVTuberを起用したPR配信を実施。参加したVTuberは生配信内で商品の特徴やキャンペーン情報を紹介し、実際に商品を実食して正直なレビューを行いました。犬山たまきさんのような個人勢VTuberも参加し、視聴者とのリアルタイムのコミュニケーションを通じて、商品の魅力を伝えつつ、割引コードや限定プレゼントなどの施策で購買意欲を促進。VTuberファン層への認知拡大と販売促進に成功した事例です。
【活用方法3】人気VTuberを起用したコラボレーション企画
既に高い人気と多くのファンベースを持つ既存のVTuberにブランドアンバサダーやタイアップを依頼し、短期間で高いリーチを狙う手法です。
| 成功の鍵 | 深掘りポイント |
|---|---|
| 親和性の高い VTuber選定(キャスティング) | 起用するVTuberのキャラクター性、普段の配信内容、ファンの属性が、企業や商品のブランドイメージと合致しているかを調べる。ミスマッチはPR効果の低下に繋がるため、重要なプロセスです。 |
| VTuberの魅力を活かした 企画制作 | 企業側の主張を押し付けるのではなく、VTuberの個性や人気コンテンツ(例:ゲーム実況、歌)の中にプロモーションを自然に織り交ぜる。ファンはこれを楽しめるコンテンツとして受け入れ、情報が拡散しやすくなります。 |
| 迅速かつ円滑な 連携体制 | 人気VTuberとのコラボは、契約調整や企画制作、配信進行管理など複雑なプロセスを伴います。VTuber事務所側との円滑な連携を図り、制作スケジュールやルールの遵守を徹底する必要があります。 |
活用事例
日清食品「カレーメシ」 × ホロライブ「夏はカレーメシ コラボ動画」
ホロライブ所属のクリエイター3名をアンバサダーとして起用し、TV CM・YouTube動画・SNSを横断するプロモーションを展開。「YouTube Works Awards Japan 2022」の Creator Collaboration 部門賞を受賞。SNSで「世界トレンド1位」を獲得し、動画は170万再生、生配信で同時接続数約5万人の成果を記録。
出典元:ホロライブ
くら寿司 × にじさんじ
「SMC組」「3SKM」「メイフ」といった人気ユニットのライバーを起用し、メンバーの好物を組み合わせたオリジナル寿司メニュー(例:3SKMの“マッケンチーズバーガー”寿司など)を期間限定で販売。限定グッズ(クリアファイル・缶バッジ・めじるしチャーム等)を景品にする「びっくらポン!」企画も併設。
出典元:Digital PR Platform
企業の課題を解決する支援会社について
VTuberマーケティングは高い効果が見込める一方で、「どのVTuberを選べばいいかわからない」「企画のノウハウがない」「炎上リスクが不安」といった課題も多くあります。特に、企業公式VTuberの立ち上げ(活用方法1)や人気VTuberの起用(活用方法3)では、専門的な知見が成功を左右します。
支援会社と連携することで、キャスティングや企画・制作における課題を解決し、より確実にVTuberマーケティングを成功に導くことができます。
一例として、「Alive Project byGMOペパボ」が提供している企業向けプロモーションサービスでは、企業とVTuberの双方の不安や警戒心を和らげ、円滑で効果的なプロモーションを実現します。
- 制作サポート: 配信進行管理から、配信で使用するクリエイティブの制作までをワンストップでサポートします。
- VTuberの魅力を活かした企画: VTuberの個性を最大限に引き出す配信企画や演出を提案します。
- 目的に応じたキャスティング: 目的や予算に最適なVTuberを専門の知見から選定します。
こうした専門支援を活用することは、貴社が本業に集中しながら、VTuberマーケティングを成功させるための最も確実な方法の一つです。
VTuber活用における注意点と導入ステップ
VTuber施策を成功させるには、導入目的の整理とリスク対策が重要です。ここでは、VTuber活用をスムーズに進めるための準備と注意点をまとめます。
導入前の必須ステップ
- 目的・ゴールの明確化
「なぜVTuberを導入するのか?」(認知拡大?採用?売上貢献?)という目標を具体的に設定する。 - 短期施策に終わらせない運用計画の立て方
キャスティングする場合はVTuberの起用費用(タレントフィー)などの初期費用に加え、継続的な企画・配信にかかる運用コストを確保し、短期的な施策で終わらせない計画を立てる。 - 炎上対策・運用ルールの策定
発言チェック体制、SNS運用のガイドライン、不測の事態(炎上など)が発生した際の対応フローを事前に定めておく。
内製と外注の検討
VTuberの導入を決めたら、次に考えたいのが運用体制です。自社で進めるか、専門会社に依頼するかによって、コストやスピード、柔軟性は大きく変わります。それぞれの特徴を理解した上で、最適な方法を選びましょう。
| 選択肢 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 内製 | ノウハウが社内に蓄積される。企画の自由度が高い。 | 人材確保や機材投資の負担が大きい。立ち上げに時間がかかる。 |
| 外注 | 専門会社の知見を活用でき、短期間で高品質な導入が可能。 | 費用が高くなる傾向がある。企画の柔軟性に欠ける場合がある。 |
試験的な導入やリソース不足の場合は外注、本格的に長期的な企業資産として育てたい場合は内製または支援会社の活用をおすすめします。
まとめ
VTuberを活用したプロモーションは、企業の「伝えたい想い」を親しみやすく、自然な形で届けることができる新しい手段です。
大切なのは、自社の目的やターゲットに合わせて最適な活用方法を選び、継続的に運用することです。
専門支援を活用しながら、企業の魅力を新しい形で発信することで、これまで届かなかった層へのリーチとブランド価値の向上を実現できるでしょう。



