配信の音作りを「簡単に」。Wave XLR MK.2/XLR Dock MK.2/Stream Deck + XL
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配信でつまずきやすいのは「音」と「操作」
配信を始めたばかりの頃はさまざまな困りごとに直面するものですが、「いい音」はリスナーの視聴体験に、「ストレスなく操作できること」は、配信者の配信体験にそのまま直結するので、音と操作に関する問題は早めに解決しておきたいですよね。
すでに配信をされている方は、以下のような現象に心当たりがある方も少なくないのではないでしょうか。
- びっくりして叫んだ瞬間に、マイクの音が割れてしまう
- ゲーム音・自分の声・Discord・BGMのバランスが配信中に崩れてあせる
- 機材をそろえたのはいいけど、机の上がケーブルだらけでマウス操作の妨げになる
とはいえ、ゲイン調整やエフェクト、複数アプリの音量管理は、慣れていないと意外と難しいものです。ケーブルも邪魔で操作しにくいな、というくらいならクリップでまとめてしまえばOKなのですが、ケーブルが多いと、本来差し込むべき箇所を間違ってしまい、うまく声が配信に乗らないなんていうことも。
本記事でご紹介するElgatoの新商品は、それらの課題をスマートに解決してくれます。
ElgatoというとStream Deckのイメージが強い方も多いと思いますが、実はオーディオにも力を入れており、新たに発表された「Wave XLR MK.2/XLR Dock MK.2/Stream Deck + XL」はこれまで以上にオーディオ面を強化するラインナップとなりました。
本記事ではスペックの羅列ではなく、配信で複雑になりがちな音作りを、どこまでシンプルにできるかという点と、旧モデルから何が変わったか、買い方でハマりやすいポイントを中心に見ていきます。
Wave XLR MK.2/XLR Dock MK.2の共通の核となる「Wave FX Processor」

まずは、Wave XLR MK.2とXLR Dock MK.2に共通する「中身の変化」から。
今回の新モデル(Wave XLR MK.2/XLR Dock MK.2)で大きく進化したのは、Wave FX Processor(LEWITT Audioと共同開発)が機材側に載ったことです。これまでPC側(ソフト)に頼っていた処理の一部を、機材側でリアルタイムに回せるようになりました。
ここからは、使ってみて良かった点を3つに絞ってまとめます。
1) PCが重いときでも「声」が安定しやすい
- ポイント:Wave FX搭載で、音声処理を機材側に寄せられる
- 使いどころ:PCが重い状況でも、マイク音の処理が巻き込まれにくい
これまでは、マイクにエフェクトをかける処理をPC(ソフトウェア)で行う場面が多く、配信内容によってはPC負荷の影響を受けやすい構成でした。
Wave XLR MK.2/XLR Dock MK.2は機材内チップが音声処理を肩代わりしてくれるため、配信者目線で見ると、「PCのスペックや負荷を気にしすぎず、安定した音を出しやすい」のが大きなメリットです。
例えば、最新の3Dゲームを高画質設定で配信していると、CPUやGPUに負荷がかかりがちです。従来の構成だと、状況によっては音声処理が不安定になってしまい、モニターが遅れたり、音が途切れたりする心配が出てきます。
Wave FX搭載機なら、音声処理は機材側で独立して進むので、PCが重い状況でも「声の処理」が巻き込まれにくくなります。配信中の不安がひとつ減るのは助かりますね。
実際に負荷をかけて試してみた
Wave XLR MK.2を使用して、Adobe Media Encoderで4K動画(H.265)の書き出しを走らせながら検証。音声のリアルタイム確認(モニター)・スルーアウト・別オーディオインターフェース経由の遅延を比較しましたが、体感できるほどの影響はほとんどありませんでした。

2) 音割れ対策が強い「Clipguard 2.0」
- ポイント:Clipguard 2.0で突発ピーク(叫び声・笑い声)に強い
- 使いどころ:笑い声や叫び声など、戻せない音割れ事故を減らしたい
配信中、笑い声や叫び声で音が歪んでしまう「クリップ(音割れ)」は、一度発生すると後から修正ができません。MK.2のClipguard 2.0は、こういった突発的なピークに強く作られています。
内部ではハードウェアによる「3層の保護システム」が働く仕組みです。低・中・高の3つのゲイン帯域で同時にキャプチャし、広いデータ幅で処理して余裕(ヘッドルーム)を確保します。さらに最後にピークを整えることで、突発的な大声でも破綻しにくくしています。
細かい数値を意識しなくても「ライブ中の『今割れたかも』を減らせる」のは、配信に集中できる点でとても有用ですね。
実際にWave XLR(Clipguard 1.0)とWave XLR MK.2(Clipguard 2.0)で、入力ゲイン最大・マイク距離10cmの条件で比較したところ、Clipguard有効時はクリップが見事に回避できました。特にMK.2は最大ゲインが75dB→80dBに上がったのに、同条件でもクリップが出にくい挙動でした。
3) Auto Gain とDSPエフェクトで「最初の壁」が低くなる
- ポイント:Auto GainとDSPで“破綻しない初期値”を作りやすい
- 使いどころ:「ゲインどれくらい?」で詰まりがちな最初の設定

「ゲインはどれくらいに設定すればいいの?」という問題を雑に解決してくれるのがAuto Gain Wizardです。Wave Linkの設定ボタンで、普段の声量をもとに目安を作ってくれます。
実際に試したところ、開始から確定まで約10秒とかなり速く、入力を変えても(声量の違いがあっても)ちょうど良いゲインに寄せてくれる印象でした。
設定前後の聞こえ方も自然で、耳で聞いてもちょうどいいボリュームに整う感覚がありました。初期設定としてゲインを0/39/80dBの3パターンで試しても、最終的な落ち着き先はほぼ同じになり、ノイズ感も特に変化はありませんでした。
DSPエフェクトも、ローカット→エクスパンダー→Voice Tune→コンプレッサー→イコライザー(EQ)の順で整理されていて、破綻しない音に寄せやすいのが◎。
そして最大のポイントは、これらが機材側で処理されるので、「エフェクトがかかった後の自分の声を、遅延を気にすることなくヘッドホンでモニターしやすい」ことです。
実際に試した限りでも、DSPをオンにした瞬間からスルーアウトで変化が聞き取れ、音のズレや違和感もほとんどありませんでした。
自分の声が少し遅れて返ってくるあの違和感が減ると、長時間の配信でも話しやすくなります。
- ローカットフィルター: 低域ノイズ(空調、机の振動など)を抑える
- エクスパンダー: 話していないときの部屋のノイズを自然に下げる(語尾が切れにくい)
- Voice Tune: 昔のラジオやテープレコーダーのような「アナログの温かみ」を加えつつ、声の太さ・存在感を足してくれるElgato独自のエフェクト
- Voice Tuneを使うなら、基本的には別途コンプレッサーをオンにしなくてもOK。Voice Tune内部に“自然なコンプレッション”が含まれていて、公式ガイドでも「日常的なコンプレッサーの代わりになりやすい」とされています。
- 逆に「温かみは要らないけど、音量だけ均一にしたい」場合は、Voice Tuneをオフにして通常のコンプレッサーを単独で使うのが分かりやすいです(両方オンだと圧縮されすぎることがあります)。
- コンプレッサー: 声の大きいところを少し抑えて、全体の音量差をならす(小さい声が聞き取りやすくなる)
- イコライザー(EQ): 周波数帯域ごとの音量を調整して、こもり感や刺さりを抑えたり、声の輪郭を出したりする
加えて、VSTプラグインをWave Linkのマイク設定に追加(VST Insert)できるので、仮想マイクを何段も経由する構成を避けつつ、「自分の音」を作り込める余地もあります。
以上を踏まえて、Wave XLR MK.2・XLR Dock MK.2・Stream Deck + XLの3製品を個別に見ていきます。それぞれの特徴と、どんな人に向いているかを整理していきましょう。
機材レビュー1:Wave XLR MK.2


- 日本発売予定:2026年3月13日
- 小売希望価格:28,980円
- ポイント:初代よりもゲイン/ヘッドホン周りが強化
- 使いどころ:独立型で音周りを“手元で完結”させたい時に
Wave XLR MK.2は、独立型のXLRオーディオインターフェース。価格は初代とほぼ変わらないですが、中身はしっかりアップデートされています。
基本性能とアンプ周り
- 最大80dBのクリーンゲイン(初代の75dBから増加)
- ElgatoのWave DXのようにゲインがあるとより効果的な運用ができるマイクでも、追加のインラインプリアンプなしで運用しやすい
- ヘッドホンアンプにHigh Power Modeが追加され、インピーダンス高めのヘッドホンも鳴らしやすくなった
- 旧モデルでも一般的なゲーミングヘッドセットやスタジオヘッドホンは十分に鳴らせる印象。実際に手元の標準的なモニターヘッドホンで試したところ、通常モードでも十分すぎるほどの音量が出ました。
- MK.2のHigh Power Modeは今すぐ必須というより、将来的に高インピーダンスのハイエンド機にステップアップしたくなったとき、別途ヘッドホンアンプを買い足さずに済む「未来への投資」としてとらえると良いでしょう。
操作性と表示
ダイヤル操作に合わせてLEDリングが追従してくれるので、いま何を触っているかが直感的に分かります。入力や出力の状態もLEDで見えるようになっていて、初代からの“見える化”がしっかり進化している印象でした。
特に、マイクの入力メーターが手元のLEDで確認できるのはかなり良くて、配信中に「いま割れそうか?」が判断しやすいです。
加えて、LEDの光量を調整できるようになったのも地味に便利で、暗い部屋でも眩しすぎずに使えます。

大きいダイヤルで、ゲインやヘッドホン音量、ミックスのバランスなどを手元で触れます。LEDリングの視認性も良く、Clipguard 2.0が効いたときに色で分かるのも実用的。
初代からの注意点(操作が変わったところ)
初代はダイヤル長押しで48Vファンタム電源のON/OFFができましたが、MK.2は本体操作ではなくWave Link 3.0側から切り替える仕様に変更されています。
ダイヤル長押しはAuto Gainに割り当てられたので、買い替え組はここだけ要注意です。
機材レビュー2:XLR Dock MK.2

- 日本発売予定:2026年3月13日
- 小売希望価格:22,980円
- ポイント:ドックはマイクが挿せる拡張モジュール → Wave FX搭載で中身が別物に
- 使いどころ:机上をスッキリさせたい、MK.2世代でそろえて音声処理能力をUP
XLR Dock MK.2は単体では動かず、Stream Deck +(通常版)背面に合体させて使う拡張モジュールです。「マイクのインターフェースは欲しいけど、机の上にデバイスをこれ以上増やしたくない」という人に向いています。Stream Deck +をすでに持っている、または購入予定の人であれば、1台にまとめることでケーブルや電源まわりもスッキリさせられます。
MK.2で変わったところ
初代XLR Dockも、ゲインやファンタム電源といったオーディオインターフェースとしての基本機能はしっかり備えていました。ただ、ノイズ除去や音圧調整といった音声処理はPC側に任せる構造でした。
MK.2では、Wave FX Processorが内蔵され、音声処理がデバイス側で完結するようになっています。ノイズを抑えたり、声の音圧を均一に整えたりといった処理を、PCに負荷をかけずにリアルタイムで行えるのが大きな変化です。性能は単体製品のWave XLR MK.2とほぼ同等で、物理ダイヤルやミュートボタンは非搭載ですが、「机をスッキリさせるための拡張パーツ」が「本格的な音声インターフェース」へと進化した世代交代と言えます。
【超重要】互換性の落とし穴
XLR Dock MK.2はStream Deck +(通常サイズ)専用です。大型モデルのStream Deck + XLには対応しておらず、物理的に背面に当てること自体はできても、公式には対応外(非推奨)とのことでした。買い間違いが起きやすいポイントなので、購入前に手持ちの機種を確認しておくのが安全です。


また、XLR Dock(無印)とXLR Dock MK.2は外見がほぼ同じで、ぱっと見では世代の見分けがつきません。中古品の購入時や複数台持ちの場合は、世代の取り違えにも注意が必要です。

比較:Stream Deck + XL と通常版Stream Deck +

- 日本発売予定:2026年3月13日(Stream Deck + XL)
- 小売希望価格:59,980円
- ポイント:通常版(8キー/4ダイヤル)→ XL(36キー/6ダイヤル+タッチストリップ)
- 使いどころ:ページ切り替えを減らして、配信中の操作ミスと手戻りを減らしたい
操作系の本命がStream Deck + XLです。OBSのシーン切り替え、Discord、照明、BGMといった操作を1画面に並べられるので、ページを切り替えながら探す手間がなくなります。
サイズとレイアウト

8個のLCDキー + 4ダイヤル + タッチストリップ

36個のLCDキー + 6ダイヤル + タッチストリップ
Stream Deck +と比べると、Stream Deck + XLは幅が約1.5倍、重さは約2.3倍。キーは8個から36個と4倍以上に増え、ダイヤルも4個から6個になります。タッチストリップ(ダイヤル上部にある横長のタッチバー)を搭載している点は共通です。デスクに置いたときの存在感はかなり変わるので、設置スペースは事前に確認しておくのが安全です。
ダイヤルが6個になるメリット
実際に触ってみると、割り当てを一画面にまとめやすくなる分、ページ切り替えの手間が減って操作もスムーズになります。
従来のStream Deck XL(+なし/32キー)と比べてもボタン数が増えているので、よく使う「ボタン操作」をページ移動なしで並べやすくなります。あえて未設定のボタンを“区切り”として置くことで、機能ごとに配置をグルーピングする運用もしやすいです。
気になった点
- ボタン同士の距離が狭くなるので、慣れるまで押し間違いのリスクは少し上がる
- 物理的に大きく、デスク上の占有スペースは増える
6ダイヤルあると、ゲーム音/声/VC/BGMなどを“専用つまみ”に割り当てやすく、ライブ中の微調整がかなり楽になります。Wave Linkで複数チャンネルを分けている場合も、ダイヤルが足りずにマウス操作が増える、という場面を減らしやすいです。
まとめ:それぞれ向いている人
Wave XLR MK.2
- 手元の物理操作が好き
- インターフェースは独立で置きたい
- ヘッドホンも含めて音周りをしっかり作りたい
XLR Dock MK.2
- 机上をスッキリさせたい
- Stream Deck +(通常版)と一体で組みたい
- ケーブル本数をとにかく減らしたい
Stream Deck + XL
- 画面を切り替えずに「全部を手元で回したい」
- 複数アプリ運用が日常
- 操作ミスを減らして配信時の余裕を作りたい
今回の新モデルは、ただのスペックアップというより「配信で事故りやすいところ」を機材側で潰してくれた印象です。
- 叫んでも割れにくい(Clipguard 2.0)
- モニター遅延やPC負荷を抑えやすい(Wave FX Processor)
- 最初の設定が破綻しにくい(Auto Gain/DSP)
- 手元操作を集約しやすい(Stream Deck + XLでキー/ダイヤルを増やし、ページ切り替え操作を減らしやすい)
「設定で悩む時間」を減らして配信の中身に集中したい人には、かなりメリットの大きい進化をしているなと感じました。冒頭でもお伝えしたとおり、音はリスナーの視聴体験に直結する要素です。課題に感じているところがあれば、旧モデルからの買い替えや新規購入を検討してみてはいかがでしょうか。
