【ゲームクリエイター藤井のつよくてニューゲーム】ストリーマーとの共創で変わるゲーム開発

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ゲーム開発は、いま「開かれた場所」になりつつある

近年、ゲーム配信は単なる「宣伝のための場所」ではなくなりました。
配信者の意見を取り入れてアップデートが行われたり、配信者限定の先行プレイが実施されたり、「配信を前提にした仕様」がゲーム側に用意されることも珍しくありません。
そのことについては、前回の連載記事『配信映えするゲームデザインとは』でも詳しくお伝えしました。

かつてのゲーム開発は、どちらかというと「閉じた空間」の中での作業でした。
開発者同士で「何が面白いのか」「何がウケるのか」を話し合ってゲームを作ります。
ところが、ゲーム開発者は忙しいのも相まってゲームプレイの総量が足りていないことが多いんです。その結果、どうしても自分たちの「面白い」が固定化しやすくなってしまいます。

しかし今は、ストリーマーやコミュニティの存在が、開発の前線に影響を与えています。
言い換えれば、ストリーマーは開発現場の「外部」ではなくなりつつあるのです。

開発者とストリーマーの関係は、「作る側」と「遊ぶ側」という一方向の構図ではなく、共創(コ・クリエイション)という新しい段階に入っています。
今回は、その「共創」がどのようにゲーム開発を変えはじめているのかを、開発現場の視点から紐解いていきます。

ストリーマーは「最強のテスター」になった

配信からリアルタイムでバグやグリッチが見つかる時代

現在の配信は、数時間にわたる「ノーカットのプレイログ」が主流です。
実況プレイをライブ配信し、後から編集したものも動画として公開配信するという形式が多く、 配信者のスタイルにもよりますが、1時間を超える実況プレイを投稿するケースも増えています。
長時間の配信は、勉強や仕事など何かをしながらの「ながら見」にピッタリというのもあって、ショート動画にはない魅力がありますよね。
この長尺の記録は、開発者にとっては意図していなかったルートや挙動を容赦なく映し出すのです。

また、一般プレイヤーよりも挑戦的な遊び方をするのも特徴で、「そんなことする人いるの?」という動きを本当に試してくるのがストリーマーです。
まさに「やってみた」という動画ですね。
バグや想定外のプレイは、そうした「ゲームのスキマを突く」という遊び方から発見されやすくなります。
さらに、視聴者がコメント欄で情報を補完してくれるため、いまや配信は「集団デバッグ」のような状態と言っても過言ではないですね。

視聴者がいるからこそ気づけるポイント

ストリーマーはプレイしながら、「いま視聴者にどう見えているか」を常に意識しています。

そのため、

  • UI(ユーザーインターフェース)の見やすさ
  • エフェクトの速度
  • チュートリアルの理解しやすさ
  • テンポの良し悪し
  • ムービーの長さ

といった「配信視点での違和感」にとても敏感です。

「UIが見づらい」「エフェクトが派手すぎてプレイが見えない」「ゲームルールがよくわからない」「テンポが悪くて盛り上がれない」「ムービーが長くてつまらない」といった違和感が重なると、視聴者が離脱してしまう可能性が高まります。
そうなると、「視聴回数が伸びないタイトル」という烙印を押され、ストリーマーに取り上げてもらえなくなります。取り上げられなければ新たな視聴者にも届かず、さらに認知が広がらない——という負のスパイラルに陥ってしまうんです。

コミュニティの声を代弁してくれる

人気ストリーマーは、何万人もの視聴者の声をリアルタイムで受け取ります。
そのため、ストリーマーの感想は「ひとりの意見」ではなく、コミュニティ全体のムードを反映したものになる傾向があります。
視聴者は、死にゲーをプレイするストリーマーには何度も失敗する姿に笑いや快感を求めますし、考察系のストリーマーにはやりこみプレイや尖ったプレイを求めます。
その結果、ストリーマー自体のプレイスタイルや配信スタイル、編集スタイルも確立していくわけですね。

開発者にとっては、ストリーマーとそのコミュニティは、膨大なユーザーの反応を短時間で把握できる貴重な存在ともいえます。

「配信者向け機能」が標準装備になっていく

配信モード・視聴者参加型はもう珍しくない

最近のタイトルには、

  • UI非表示モード
  • 配信中に著作権保護の曲を自動で差し替える機能
  • 視聴者がゲーム内に影響を与えるシステム

など、配信者向けの機能が最初から導入されることが増えました。

『Cult of the Lamb』
視聴者が村の住人としてゲーム内に登場したり、次に選ぶパワーアップをアンケートで決めたりと、「共創」をシステム化している代表例。
『サイバーパンク2077』
設定画面に「著作権保護楽曲を無効にする」というストリーマー専用のトグルスイッチを用意

特に「視聴者参加型」は配信との相性が良く、Twitch連携や視聴者投票など、「観る」だけでなく「参加する」体験を生む設計が増えています。
これまでのゲーム開発では、ゲームクリエイターのみが作り上げた遊びを楽しむだけでした。しかし最近は、視聴者が参加できる仕組みを導入することによって、配信者にとって取り扱いやすいタイトルにすることが当たり前になりつつあります。

ネタバレ防止とプロモーションの両立

ストーリー重視の作品は、配信によるネタバレが避けられません。

そこで「特定シーンだけ自動的に画面が隠れる」など、核心部分を守りながらも配信を止めない仕組みが増えています。ネタバレを防ぎつつ、配信者には宣伝してもらう。一見相反するこの二つを同時に成立させる設計こそ、配信文化に適応したゲーム側の進化と言えるでしょう。

『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』
ストーリーの核心部分に配信禁止区間を設けたり、PS4/PS5のシェア機能自体を制限。(現在は制限解除)

MOD文化が配信を加速

PCゲームでは、MOD対応が配信文化を爆発的に広げるケースがあります。
配信者はネタMODを試したがる傾向が強く、それが視聴者とのコミュニケーションを生み、ゲーム寿命を引き延ばします。

MODは、ある意味で「ゲームの共創を公式化した仕組み」と言えるでしょう。
またこのMOD文化は海外では一般化しており、実は「ゲームクリエイターの入り口」という側面も強いです。

『Grand Theft Auto V』
MODを利用した「ストリートグラフィティ」のようなロールプレイ配信は、もはや元のゲームとは別のコミュニティとして巨大化しており、MODが寿命を延ばした好例。


実際に、多くのユーザーに導入されているMODを作った人が、ゲーム会社から声がかかり、プロのゲームクリエイターになったという実例もあります。

配信とMODの相性の良さがよくわかるエピソードですし、MODを通してアイデアや実装力をアピールできるのも見逃せないところです。

ストリーマーとの「共同開発」事例が増えている

意見を直接反映するケース

海外タイトルでは、人気配信者を開発段階のレビューに招く文化があります。
そのフィードバックをもとに、

  • 初期UI
  • チュートリアル
  • テンポ

などが改善されるケースが実際にあります。

ストリーマーは「ライブの視認性」や「リアクションの出しやすさ」に敏感なので、ゲーム映えを重視する際には非常に有効です。

アーリーアクセス × 配信者コミュニティ

アーリーアクセス版の配信は、ゲームの改善スピードとコミュニティの拡大に大きく貢献します。
特に海外やSteamでは、アーリーアクセスからの配信でアップデートを重ねていく方針がもはや主流になっています。

『Vampire Survivors』
アーリーアクセス中にストリーマーがバズらせ、そのフィードバックを受けて凄まじい頻度でアップデートを繰り返した「共創」の完成形。
『Palworld / パルワールド』
配信者のプレイ動画からバグや仕様への意見を吸い上げ、驚異的なスピードで改善パッチを当て続けた近年の代表例。

配信でバズる

コミュニティが拡大

意見が大量に集まる

開発スピードが上がる

このサイクルが成立すると、作品の成長速度は目に見えて変わります。

実際、開発者だけで生み出せる面白さにはある程度限界があり、開発では予算や技術、時間の兼ね合いもあり、多かれ少なかれ妥協は避けて通れない宿命にあります。

また、バグや違和感などの問題も避けられません。
先ほど述べたように、開発中のテストプレイの回数はユーザーのプレイ数に遠く及びません。
よって、数多くのゲームがリリース後すぐにユーザーにバグを発見され、緊急アップデートをするという対処を行っています。
作品の規模が大きくなればなるほどバグの影響も大きくなりますから、早期の段階でバグや問題の解消ができる利点もあります。

配信者が「これはなんとかしてほしいな」「これさえ直れば遊びやすい」と実況することで、開発側が瞬時に動き、そのアップデートされたゲームをプレイして「最高!めっちゃ良くなってる!」と実況されれば、もはや専属の広報係と言っても良いぐらいの働きです。

このスピードが早ければ早いほど、視聴者の興味を惹き付け、ゲームのファン作りに繋がっていきます。

依存しすぎるリスクと、開発者が守るべき距離感

声の大きい意見に引きずられやすい

人気配信者の意見は影響力が強く、それが多数派の意見に見えてしまうことがあります。
「この仕様、微妙だな」とか「もっとこうしてくれたら良いのに」と言いながらプレイする様子を配信動画で見たことがあると思います。
配信者の動画を見ている視聴者は、いわば配信者のファンなのでこういった意見に共感・同調しやすいです。

しかし実際には、ストリーマーの遊び方は一般ユーザーと大きく異なることも多いです。
配信目的、ゲームプレイの上手さ、プレイスタイル、取り扱うゲームタイトルやゲームジャンルなど、配信者ごとに差別化を図っていますから、「文句を言いながらプレイするスタイル」や「ウンチクを語りながら実況する」など、単純に楽しんでいる様子だけを配信しているとは限りません。

忖度した調整はゲームを壊す

配信者の意見や感想が原因で、

  • 難易度を過剰に調整する
  • 特定の武器やキャラを強化・弱体化する

といった判断をすると、ゲーム全体のバランスが崩れる危険があります。

開発者は「特殊な環境でプレイしている」という前提を必ず忘れてはいけません。
失敗すらも「見せ場」になる配信者に合わせすぎると、ゲームバランスが崩壊します。

主導権は開発側が握るべき

配信者の意見を取り入れるのは素晴らしいことですが、「どの方向にゲームを育てるか」の判断は、開発が握るべきです。
共創はあくまで協力関係であって、配信者に委ねてしまうことではないはずです。

例えば、とある配信者が「このゲーム、ムズイ!」と叫びながら実況していたとしましょう。その動画を見た開発者が「やばい、あの配信者に難しいと言われたから難易度下げよう」と考え、アップデートで難易度緩和を行う。しかしその結果、「難しいのが面白かったのに…」とファンから不評を買ってしまう。

これは、割と実際の現場でもある事例です。

確かに理不尽すぎる難易度はそもそもマズイですが、「骨のある難易度を楽しんでもらいたい」と設計されたゲームであれば、「配信者がヒィヒィ言いながら遊ぶ」と言うことも折り込み済みなはずです。
しかも、配信者側も「自分が高難易度のゲームにチャレンジして苦戦している様子」を視聴者に楽しんでもらいたいのですから、最初からWin-Winだったはず。

配信者の反応や感想をそのまま真に受けて「言いなり」になるのは、開発者としてはあるまじき姿勢です。

これからの開発は「もっとオープン」になる

対話型の開発文化へ

Discord、SNS、フォーラムなどで、開発者とユーザーが直接話す場が増えています。

情報を隠し続ける時代は終わり、開発途中の意図や背景を透明化することが、むしろ信頼に繋がる時代です。
開発者が思う完成を長い時間をかけて目指すよりも、
多くのユーザーの意見を取り入れられるように迅速に開発を行いリリースする。

余計な開発費が膨らまず、直接ユーザーとのコミュニケーションでゲームを完成させていく、エコロジーな作り方でもあるのです。

コミュニティドリブン開発の可能性

配信

意見

改善

また配信

コミュニティが育つ

この循環は、ゲームの寿命を飛躍的に伸ばします。
ライブサービス型のゲームほど、この「共創サイクル」の恩恵は大きいですが、コンシューマーの基本一人用プレイのゲームであっても、その恩恵を受けることはできます。

配信者を中心としたコミュニティが出来上がると、コメント欄を通じた交流が生まれ、新たなプレイヤーが流入するという循環が起きます。これは特定のジャンルに限らず、どんなゲームタイトルでも起こりうることです。

これはクリエイターにとってはまさに追い風であり、熱量の高いコミュニティを生むようなゲームデザインやコンテンツ作りが、より一層求められている時代ということなのです。

閉じた開発から、開かれた共創へ

ストリーマーとの関係は、ゲーム開発の姿を大きく変えつつあります。
配信が生むフィードバック、コミュニティの熱量、視聴者との対話。
これらは、かつて想像もできなかった規模でゲームを動かしています。

しかし開発者が忘れてはいけないのは、
「主役はあくまでプレイヤーである」という点です。

ストリーマーとの共創は、ゲームを「閉じた世界」から「開かれた場」へと変えていくための力です。
その距離感をどう保ち、どう活かすか——
そこに、これからのクリエイターの腕が問われていきます。

この記事を書いた人

藤井 厚志

「世界基準のゲームクリエイターを育成する」というビジョンのもと、ゲームクリエイターー教育に革新をもたらすオンラインスクール「GPC(Game Planners Club)」を主宰。 株式会社コナミデジタルエンタテインメント在籍時には、『実況パワフルプロ野球』シリーズや『プロ野球スピリッツA』など、モバイルおよびコンシューマーゲームの企画・ディレクションを歴任。 現場で培った知見と実践ノウハウを体系化し、ゲームプランナー育成の標準を確立すべく活動。 2023年には、ゲームプランナー職の実務と考え方をまとめた書籍『プロフェッショナルゲームプランナー』を刊行。 X:@thickwill56

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