営業ゼロでも依頼が止まらない!「実績公開不可」と「生成AI禁止」に企業目線で答える【恋愛でわかる!学校じゃ教えてもらえないイラストレーターのためのガチ話】
企業目線のホンネ、ぶっちゃけます
どうも〜!イラスト・クリエイト会社の社長をやってます、うさねこ社長です!
本連載記事では、「恋愛でわかる!学校じゃ教えてもらえないイラストレーターのためのガチ話」と題して、クリエイターが生き残るための生存戦略を話しています。
今回もマシュマロ回答回です。
今回届いた質問は2つ。どちらもクリエイターが企業に直接聞きづらい「ぶっちゃけどうなの?」系の質問です。
- 「実績公開不可」って、依頼者側にどんなメリットがあるの?
- 「生成AI禁止」と掲げているクリエイターには依頼しづらい?
僕はイラスト・クリエイト会社を経営していて、発注する側・される側の両方を経験しています。
だからこそ、表の回答だけじゃなく裏のホンネまで含めて答えていきます。

Q1. 「実績公開不可」って依頼者側にどんなメリットがあるの?
昔から疑問なのですが、実績公開不可って依頼者的にどういうメリットがあるんでしょうか……ゲーム関係の仕事をしているので、スタッフロールは曲の長さや表示数的に載せられない、クレジット不可、結果的に実績公開不可、というのはわかるのですが、制作をほぼ別会社に丸投げしておいてその事実は秘密扱いとかも結構見て、長年不誠実さと不信感を感じています。

この質問者さん、たぶん実績を公開させてもらえないこと自体にムカついてるんだと思います。
気持ちはめちゃくちゃ分かります。僕も昔、下請けとしてクリエイトをやっていた時代があって、実績公開不可の案件は多かった。特に広告代理店経由の案件はほぼ公開できなかったですね。
この質問には、表の回答と裏の回答、2つに分けて答えます。
【表の回答】権利関係の整理が面倒だから
依頼企業の担当者も、本音では「実績公開ぐらいよくない?」と思っていることが多いです。
ただ、怖いことがある。
あなたが自分のサイトやSNSに画像を貼った瞬間に、「目的外利用」「第三者への公表」「宣伝利用」「再配布」に該当しうるんです。
版権・IP・タレント・スポンサーが絡んでいたり、元請け→制作会社→外注という受注構造が長かったりすると、誰がどこまで許可を出せるかが非常に面倒になります。
だから依頼者側は、事故を避けるために「一律NGにしてゼロリスク」を選びがちなんです。
【裏の回答】元請けが「うちで作りました」という体裁を守りたい

ここが人間くさいホンネの部分です。
勘違いしないでほしいのですが、外注そのものは悪じゃありません。制作って外注ありきの世界も多い。
問題は、外注しているのに「外注していない風に見せたい」というところ。
元請け側も100%「ズルしたい」だけじゃないケースがあります。
クライアント側には今でも「外注=品質が下がる」と思っている人が一定数いる。だから元請けは「うちはワンストップで制作できます」「社内チームで品質管理しています」と売りたくなる。
さらに、かなり人間くさい本音として「実績を渡したくない」という気持ちがあります。
元請けは仕事を取ってくる、無茶な要望を整理する、炎上しないように段取りを組む、責任の窓口になって矢面に立つ——これは外から見えないけど、現場では一番コストがかかっている部分です。
だから元請け側からすると「この案件を成立させたのは、うちの信用と段取りだ」という感覚になる。外注側が実績公開すると「積み上げたものが外に持っていかれる」と感じてしまうんです。
恋愛で例えるなら

サプライズパーティーを企画した人がいたとします。
場所の手配、参加者への連絡、プレゼントの調達——全部仕切った。
でも当日、料理を作ってくれた友人が「この料理、全部私が作ったんだよ!」とSNSに投稿したら……。
仕切った側としては「いや、企画も調整も全部こっちがやったのに」とモヤッとしますよね。
でも料理を作った側も「私の実力なのに名前すら出せないの?」と不満が残る。
どちらの気持ちも正しい。だからこそ、善悪じゃなくて構造の問題として理解するのが現実的です。
僕の場合

ちなみに僕は、実績公開できない仕事はスーパー高単価じゃない限りお受けしません。
実績公開できない → 次の仕事が取れない → だから下請けとして回る → 永遠に抜け出せない。
この無限ループに入ると本当に大変だからです。
ただし、スーパー高単価なら受けます。そのお金を使って、次の仕事を取るための活動費に充てればいいという考え方です。
Q2. 「生成AI禁止」と掲げているイラストレーターには依頼しづらい?
企業としてイラストレーターさんにご依頼する際に、「生成AI禁止」「生成AIは許しません」などを掲げているイラストレーターさんにはご依頼しづらいなどあったりしますか?

時代にあった良い質問ですね。
結論から言うと、「生成AI禁止」と書いてあるから即NGではない。
でも、書き方次第で「依頼しづらくなる」ことは普通にあります。
企業が怖いのは「AIが好きか嫌いか」じゃない
企業が見ているのは、次の3点です。
1. リスク(権利・炎上・法務)
企業はとにかく事故が嫌い。著作権、利用規約、学習データ、第三者の権利侵害、炎上——ここが不明確だと社内稟議が通りません。企業が怖いのは「AI」そのものじゃなくて、リスクが説明できない状態。
2. 品質(意図通りにコントロールできるか)
企業が欲しいのは、ブランドや世界観に合わせた再現性のある成果物。AIを使っても修正で崩れる・タッチが揺れるとなると困る。AIかどうかじゃなく「品質の再現性」がすべて。
3. 進行(納期・連絡・安定性)
AIを使っていようがいまいが、遅れる人は遅れる。企業が見ているのは「安心して任せられるか」。
依頼しづらくなるのはこういう時

「生成AIは許しません」「AI使う人は敵です」——こういうニュアンスの発信があると、企業側はこう感じます。
- 「この人、地雷かも……」
- 「コミュニケーションで揉めるかも」
- 「炎上した時に火が大きくなりそう」
企業が避けたいのは揉め事です。だから強い言葉は損しやすい。
恋愛で例えるなら

初対面の食事で「私、こういう人は絶対無理!」「これをする人は敵!」と強い言葉で語る人がいたら……たとえ内容に共感できても、「この人と付き合ったら、何かあった時に大変そうだな」と身構えてしまいませんか?
逆に、「私はこういうスタンスです」「こういう理由でこうしています」と穏やかに伝えてくれる人には、安心感がありますよね。
主張の中身が同じでも、伝え方だけで印象は大きく変わります。
僕はAI肯定派。でもクリエイターを採用し続ける
僕の立場も言っておきます。僕はAI肯定派です。
AIが今後主流になっていくのは間違いない。でも僕は、今後もイラストレーターやクリエイターを採用していきます。
理由はシンプル。作品だけが売り物じゃないと理解しているからです。
企業がクリエイターに払っているお金は、絵のピクセルだけに払っているわけじゃありません。
企業が本当に買っているもの:
- “解決”を買っている — 企業が欲しいのはイラストじゃなくて、その先の目的(売上を上げたい、ブランドを良く見せたい)。曖昧な「もっとエモく」「なんか刺さる感じで」を、勝てる形に翻訳できるのは人間
- “一貫性”と”責任”を買っている — 連作、グッズ展開、継続案件、ブランドのトーン&マナー。何ヶ月も跨ぐプロジェクトで必要なのは再現性と責任。AIは責任を取らない
- “コミュニケーション”を買っている — 返信が早い、進行が見える、意図を汲み取ってくれる。これは作品とは別の価値
- “その人の世界観”と”熱量”を買っている — 「この人だから出せる解釈」「この人の線だから刺さる」——ここはまだ人間が圧倒的に強い
だから僕はAI肯定派だけど、こういうクリエイターは今後も採用する。
AIが伸びれば伸びるほど、逆に「人の価値」が浮き彫りになる領域が出てくると思っています。
本当の売り物は、設計・再現性・責任・コミュニケーション・世界観。
ここを磨けるクリエイターは、AI時代でも普通に選ばれるし、むしろAI時代だからこそ強い。
今回のまとめ

今回のマシュマロ回答をまとめます。
- 「実績公開不可」の裏には、権利リスク回避と元請けの人間心理がある。善悪じゃなく構造の問題として理解する
- 実績公開できない仕事はキャリアの積み上げが止まる。受けるなら高単価限定がおすすめ
- 「生成AI禁止」自体はNGじゃないが、強い言葉は企業を遠ざける。主張の中身より伝え方が大事
- 企業が買っているのは「絵」じゃなく「解決・責任・コミュニケーション・世界観」。AI時代でもここを磨けば選ばれ続ける
どちらの質問にも共通しているのは、「企業は何を考えて発注しているのか」という視点。
この連載では今後も、発注する側のリアルな心理を包み隠さず伝えていきます。




