配信の音作りを「1台で完結」。Elgato Wave XLR Proの実力とは
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配信が本格化してくると、音の管理がどんどん複雑になっていきます。
たとえば、
- コラボ配信で相手にBGMやゲーム音を抜いた自分の声だけをクリアに届けたい
- 配信に乗せる音量と自分がモニターする音量を別々に調整したい
- 録画用にはBGMを抜いた素材だけ残しておきたい
こうした「音の届け先ごとに、別々のバランスで送りたい」という課題は、配信規模が大きくなるほど増えていきます。
Elgatoはこの課題を、Wave Linkというソフトウェアで解決してきました。しかしWave Linkの機能を本当に引き出すには、ハードウェア側の受け皿が必要です。今回検証するWave XLR Proはその受け皿を完成させた1台です。
マイクの入力端子が2つ、音の届け先を最大5パターン同時に管理でき、ゲーム用と配信用の2台のPCをまとめて扱える。検証時点の価格は59,980円(税込)と配信機材としては高額ですが、それだけの機能を1台に詰め込んだ、Wave Linkエコシステムの現時点での最上位機種です。この記事では、Wave Linkをもっと使いこなしたい方に向けて、実機検証の結果をお伝えします!

📘 用語メモ|Wave Linkとは
Elgato製オーディオ機器を一括管理するソフトウェアです。入力ごとの音量・エフェクト・ミックス配信先をGUI上で操作できます。
マイク端子が2つ、音の届け先が5パターン、PCも2台つなげる。配信者が”あったらいいな”と思っていた機能を全部載せてきた1台です。さっそく中身を見ていきましょう。
この記事の要点
- XLR入力2系統+最大80dBゲインで、ダイナミック・コンデンサーどちらのマイクにも対応
- 5系統の独立ミックスで、配信・モニタリング・アーカイブ録音・ゲストへの返しを1台で完結
- デュアルPC対応+スタンドアロンモードで、ゲーム機やスマホとも接続可能
- Stream Deckとの連携が前提の設計。Wave Linkの習熟コストは高めだが、使いこなせば物理ミキサー不要に
はじめに
Wave XLR Proは「全部入り」のシリーズ最上位


ElgatoのオーディオインターフェースシリーズはWave Linkという専用ソフトと連動して動きます。
Wave:3 MK.2ではUSBマイクの手軽さを、Wave XLR MK.2では本格XLR入力を。各世代が「配信者がその時に欲しかったもの」を一つずつ積んできました。
現行のラインナップからWave XLR Proに近い3モデルを比較すると、以下のとおりです。
| 機種 | XLR入力 | ミックス数 | デュアルPC | 参考価格(税込) |
|---|---|---|---|---|
| Wave:3 MK.2(USBマイク) | なし | なし | 非対応 | 28,980円 |
| Wave XLR MK.2 (オーディオインターフェース) | 1系統 | 1系統(接続PC内のみ) | 非対応 | 28,980円 |
| Wave XLR Pro (オーディオインターフェース) | 2系統 | 5系統 | 対応 | 59,980円 |
Wave XLR Proは、XLR入力が2本に増え、独立ミックスが5系統に拡張。ヘッドフォン出力も前面・背面の2系統をそれぞれ異なるミックスに独立して割り当てられます。現時点でのシリーズ最上位機種です。
価格帯も上がっており、マイク1本・シングルPCで配信している方には少々オーバースペックになります。
本体底面には1/4インチネジ穴が切ってあり、Elgato Wave Desk Standなどの卓上マイクスタンドにそのままマウントできます。デスクの省スペース化やケーブル取り回しの整理に使えます。現場だとフレキシブルアームにくっつけるなど、固定化や省スペースに活用できます。


Wave:3 MK.2、Wave XLR MK.2の詳しいレビューは以下の記事で解説しています。合わせて参考にしてみてください。
>>雑談もゲームも、これ一本で配信の格が上がる「Wave:3 MK.2」の実力とは?
>>配信の音作りを「簡単に」。Wave XLR MK.2/XLR Dock MK.2/Stream Deck + XL
配信スタイル別 適性早見表
| 配信スタイル | 適性 | ひとこと |
|---|---|---|
| 雑談配信(1人) | ○ | マイク1本で十分。話すとBGMが自動で下がって声が聞きやすい |
| ゲーム実況(1人) | ○ | ゲーム音と声のバランスを細かく調整できる |
| コラボ配信(2人以上) | ◎ | マイク2本を同時接続でき、相手にエコーなしで音を返せる |
| ポッドキャスト収録 | ◎ | エフェクトなしの素の音声を別ラインで同時録音できる |
| デュアルPC配信 | ◎ | ゲーム用と配信用、2台のPCを1台にまとめられる |
| 歌枠・ASMR | △ | 使えるが、この価格帯なら歌・ASMR向けの専用機材も検討 |
コラボ配信・ポッドキャスト・デュアルPC配信は、Wave XLR Proの独自機能が直接活きるスタイルです。XLR入力2系統でマイクを2本同時に扱え、5系統の独立ミックスでマイナスワン(相手の声だけ除いた音)やドライ音源(エフェクト前の素の収録データ)を別ラインに振り分けられます。USB-CのHostポートとAuxポートで2台のPCをケーブル1本ずつで接続でき、ダッキング機能を使えば発話時にBGMを自動で下げることも可能です。
各機能の詳細はこのあとの章で検証していきます!
テスト条件|この記事の検証は以下の環境で実施しています
メインPC:【要入力:OS・スペック】
配信ソフト:【要入力:OBSバージョン等】
Wave Link:【要入力:バージョン】
使用マイク:Wave DX(ダイナミック)、【要入力:その他マイク】
ファームウェア:【要入力:バージョン】
※本記事の評価は当チームの検証環境での結果であり、マイクの機種や接続環境によって結果は変動する可能性があります。
ゲインとダッキングの性能は?配信で使えるか検証
80dBゲインは余裕あり、適正値は57〜58dBあたり
Wave XLR Proの訴求の一つが「最大80dBプリゲイン」です。Wave XLR Proではこのアナログ段階での増幅を80dBまで引き上げられます。ダイナミックマイクは機種によって60dB以上のゲインを必要とするものもあり、80dBあれば幅広い機種に余裕をもって対応できます。
📘 用語メモ|ゲインとプリゲイン
ゲインはマイクの音を増幅する量のことで、dB(デシベル)という単位で表します。dBは音の大きさや増幅量を表す単位で、数値が大きいほど増幅量が多くなります。感度の低いダイナミックマイクでも、ゲインが高ければ十分な音量で収録できます。プリゲインはマイクから入ってきた音をデジタル変換する前にアナログ段階で増幅する量のことで、通常の「ゲイン」とほぼ同じ意味で使われます。
Wave DX(ダイナミックマイク)を接続して実際に段階的に計測してみました。
まずは結果をご覧ください。
| ゲイン | ピークレベル | 判定 |
|---|---|---|
| 40dB | -22.55 dBFS | 小さすぎる |
| 60dB | -4.07 dBFS | 適正範囲 |
| 80dB | 0.00 dBFS | クリップ(音割れ) |
ピークレベルとは録音された音の最大到達点のことで、0 dBFS(デジタルの天井)に近いほど音が大きく、マイナスの値が大きいほど小さい音です。
40dBでは-22.55 dBFSと小さすぎますが、60dBなら-4.07 dBFSと適正範囲。80dBまで上げると0.00 dBFS=天井に張りついて音が割れてしまいます。
適正ゲインは57〜58dBで、60dBが最も近い値でした。エンコーダーを5秒長押しするだけで自動設定してくれる「オートゲインウィザード」も試しましたが、自動設定値は62dBと少し高めでした。
なお今回の計測はダイナミックマイク(Wave DX)で実施しています。コンデンサーマイクは感度が高いため、適正ゲインは一般的にこれより20〜30dB低くなります。


配信・ポッドキャスト用途では、自動設定後に手動で57〜58dBへ微調整して使用するのがおすすめです。
ハードウェアダッキング:即応性が高く、配信中も自然に動作
Wave XLR Proのダッキングは本体内部で処理されるため、発話開始から即座に反応します。話し始めるとBGMやゲーム音が自動で下がり、話し終わると元の音量に戻ります。
📘 用語メモ|ダッキング(Ducking)
話し始めるとBGMやゲーム音が自動で下がり、話し終わると元の音量に戻る機能です。マイクの声を常に前面に出したいときに使います。
設定は「深度(下げ幅)」「追従速度」「回復速度」の3パラメータで、それぞれ低・中・高の3段階です。dB値での細かい数値指定はできませんが、デフォルト(中・中・中)でBGMを再生しながら発話したところ、BGMが急に上がったり下がったりする不自然さもなく、スムーズに動作することを確認しました。
ミックスごとに独立設定できるため、Mix 1(配信用)はダッキングON、Mix 2(自分のモニタリング用)はOFFといった使い分けが可能です。ダッキングはWave XLR Pro本体で処理されるため、Wave Linkソフトが起動していない状態でも動作するのも便利なポイントです。



テスト条件|ゲイン・ダッキング検証
使用マイク:Wave DX(ダイナミック)
ダッキング設定:デフォルト(中・中・中)
音声エフェクトはWave XLR MK.2のものをすべて継承

Wave XLR MK.2で好評だった音声処理は、Proでもそのまま使えます。声の質感を整えるDSPエフェクト、突発的な音割れを防ぐClipguard 2.0。いずれもWave XLR Pro本体で動作するため、PCに処理負荷をかけません。
DSPエフェクトはローカットフィルター・エクスパンダー・コンプレッサー・EQ・ボイスチューンの5種類で、Wave Linkのスライダーで適用できます。Clipguard 2.0も健在で、急な大音量入力の歪みを防いでくれます。
さらにVST Insertにも対応しています。VSTとは、リバーブ(残響音)やボイスチェンジャーなど、サードパーティが開発した音声エフェクトを追加できるプラグイン規格のこと。Wave XLR Proでは「VST Insert」という仕組みを使うことで、VSTプラグインの音声がWave XLR Pro内部の低遅延パスを通ってPCへ出力されます。従来のように仮想オーディオデバイスを経由しないため、遅延が少なく、セットアップもシンプルです。
各機能の詳細はWave XLR MK.2のレビュー記事で詳しく解説しています。合わせてチェックしてみてください。
>>配信の音作りを「簡単に」。Wave XLR MK.2/XLR Dock MK.2/Stream Deck + XL
5系統ミックスでコラボ配信が変わる

Wave XLR Proの最大の特徴は、音の届け先を最大5パターン同時に管理できることです。
USB-CポートがHost(メインPC用)とAux(サブPC用)の2系統あり、それぞれ別のPCを接続できる構造になっています。Hostはメインの配信PCをつなぐポートで、Wave LinkソフトもこちらのPC上で動きます。AuxはゲームPCやスマホなど、2台目のデバイスをつなぐポートです。
以下は、2人が同じ部屋でXLRマイクを持ち、配信しながらドライ音源も同時収録する構成例です。
| ミックス | 用途 | 設定内容 |
|---|---|---|
| Mix 1 | 配信・録画用 | マイク+BGM+ゲーム音、ダッキングON |
| Mix 2 | 自分のモニタリング用 | 自分の声を大きめに |
| Mix 3 | 同席ゲスト用モニタリング | 背面ヘッドフォン出力へマイナスワンを返送。相手の声をエコーなしで聞けます |
| Mix 4 | アーカイブ録音用 | マイク1・2+Auxゲスト、BGMなし |
| Mix 5 | Auxゲスト接続用 | スマホやサブPCをUSB-C Auxで物理接続。ドライバ不要で認識され、エコーなしのリターンミックスをAux経由で返送 |
📘 用語メモ|マイナスワン
受け取る相手の声だけを除いた音声ミックスのことです。コラボ相手に送ることで、相手が自分の声をエコーとして聞くのを防げます。
実際にデュアルPC構成でつないでみた

Mac(Host)+Windows(Aux)で実際に接続したところ、Windowsはドライバのインストールなしで、つないだだけでそのまま認識しました。通常、2台のPCの音声を1つの機材にまとめるにはキャプチャーカードやミキサーを別途用意する必要がありますが、Wave XLR ProならUSBケーブル1本で完結します。Wave Link上でWindowsの音声を「USB Auxチャンネル」として扱えるため、ゲーム音をそのままミックスに組み込めます。
📘 用語メモ|デュアルPC配信
ゲームプレイ用PCと配信・エンコード用PCを分ける構成のことです。処理を分散させることで、配信品質とゲームパフォーマンスを両立しやすくなります。上級者に多い構成です。
前面・背面それぞれのヘッドフォン出力(どちらも3.5mm・6.3mm両対応)に別々のミックスを割り当てられるため、コラボ相手と自分で異なるモニタリング環境を作ることも可能です。実際に5系統を同時に動かしても音切れや干渉はありませんでした。

5系統全部を最初から使いこなす必要はありません。まずはMix 1(配信用)とMix 2(自分用)の2つから始めて、コラボが増えたらMix 3を足す、アーカイブを残したくなったらMix 4を足す。後から必要に応じて拡張できるのがこの製品のいいところです。
Stream Deckとセットで完成する操作性

Wave XLR Proには物理フェーダーやスイッチがありません。ミックスの切り替えや音量調整はすべてWave Link(ソフトウェア)で操作します。Stream Deckなしでも動作しますが、配信中にマウスだけでリアルタイム操作するのは難しく、Stream Deckとの組み合わせが実質的に必要になります。
Wave Linkの公式プラグインをStream Deckに設定すると、音量調整・ミュート・ミックス切替・エフェクト切替がボタン一発でできます。操作から反映までの遅延はほぼゼロです。中でもStream Deck+(ダイヤル搭載モデル)は、ダイヤルをそのままWave Linkのボリューム操作に割り当てられるため、物理ミキサーに近い感覚で使えます。ボタン数を重視するならStream Deck XL(32ボタン)も十分な選択肢です。
なお、Stream Deck連携はソフトウェアベースのため、Wave Linkが予期せず落ちた場合は操作不能になります。ハードウェアミキサーのように電源を入れるだけで動く安定性とは性質が異なる点は、理解しておく必要があります。


物理フェーダーがない代わりに、Stream Deckの画面にボリューム表示もボタン名もぜんぶ出ます。「いま何のミックスを触っているのか」が一目でわかるので、慣れてくると物理ミキサーより迷わないかもしれません。
PCなしでもマイク収録・スマホ配信ができるスタンドアロンモード

PCを使わずに単独動作する「スタンドアロンモード」にも対応しています。Wave Linkシリーズのオーディオインターフェースの中で、この機能に対応しているのはWave XLR Proのみです。
PCなしで何ができるかというと、あらかじめWave Linkで保存しておいたゲイン・DSPエフェクト・ミックス設定をそのまま呼び出して、XLRマイクでの収録やスマホ配信に使えます。Hostポート(メインPC用のUSB-Cポート)にUSB充電器を繋ぐだけで起動します。Auxポート(サブデバイス用)のみでも動作する場合がありますが、安定動作のため公式にはHostポートへの電源接続が推奨されています。
iPhoneをUSB-C Auxに接続して動作を確認しました。iPhoneの音声はWave XLR Proのミックスに組み込まれ、XLRマイクやLine Inからの音声と合わせてiPhoneに返ってきます。Android端末も対応しており、PCなしでスマホを軸にした配信・録音環境が現実的に組めます。
一点だけ気をつけてほしいのが起動時の音量です。Wave Linkで保存したゲイン設定が起動と同時に有効になるので、先にヘッドフォンのボリュームを下げてから電源を入れてください。
VSTプラグインはPC上で動くため、スタンドアロンでは使えません。DSPエフェクトとClipguard 2.0は引き続き有効です。
ゲーム機との接続
PS5はUSB-Cで直接つないでそのまま認識します。Xbox Series S|XとNintendo Switch・Switch 2の場合はアナログ接続(TRRSスプリッター経由)になります。接続方法がゲーム機ごとに異なるので、詳しくは公式の接続ガイドから使いたい機種を選んで確認するのがおすすめです。
まとめ:Wave Linkを使い込んでいる人の「次の1台」
こんな人におすすめ
ここまでの検証をふまえて、Wave XLR Proが特に合う方は以下のような方です。
- すでにElgato Wave XLRシリーズを使っていて、機能を拡張したい人
- ゲームPCと配信PCを分けたデュアルPC構成を組んでいる、または予定している人
- マイクを2本使ったコラボ配信・ポッドキャスト収録をしたい人
- Stream Deckを持っていて、音声操作もそこに統合したい人
- PCなしのスタンドアロン運用も視野に入れている人
逆に、マイク1本・シングルPC・Wave Linkにまだ慣れていないという段階では、まずWave XLR MK.2から使うのがおすすめです。
配信機材の「仕組みそのもの」を変えたい人のための1台
検証時点の価格は59,980円(税込)。配信機材としては高額な部類に入ります。ただ、物理ミキサーを別で買ってデスク周りの配線を増やすことを考えると、Wave XLR Pro+Stream Deckで完結する構成は合理的でもあります。
59,980円を出す価値があるかどうかは、5系統のミックスを使いきれるかどうかで決まります。たとえば、配信と録画で音声を分けたい、コラボ相手にマイナスワンを返したい、アーカイブ用にBGMなしのラインを確保したい。こうした課題がすでにあるなら、この1台で解決できます。
Wave Linkの習熟コストとStream Deck前提という条件はありますが、使いこなせばハードウェアミキサーを別で買わずに済みます。「今のセットアップで十分満足している」段階では投資に見合うタイミングがまだ来ていないかもしれません。でも、Wave Linkを使い込んできたElgato使いが「次の1台」を探しているなら、選択肢の筆頭になる製品です。
正直、使いこなすまでには時間がかかります。でも一度セットアップが決まると”もう物理ミキサーには戻れない”と思える完成度です。Wave Linkを愛用してきた方には、ぜひ手に取ってみてほしいです。
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今回検証した機器が気になった方は、以下公式サイトでご確認ください。
https://www.elgato.com/jp/ja/p/wave-xlr-pro
機材協力:Corsair Gaming, Inc.(Elgato)
レビュー:ウマヅラ




