「世界一静かなマイク」を実測レビュー! RODE NT1シグネチャーシリーズ/AI-1

配信のアーカイブを聴き返すと、声の後ろに「サー」という音がうっすら乗っていることがあります。話している間は気にならないのに、無言になった瞬間に聞こえてくるあの音。覚えのある方も多いのではないでしょうか。

マイクを選ぶときは、どうしても音の良し悪しに目が行きます。ですが聴き返したときの印象は、音色だけでなく声の後ろにあるノイズにも左右されます。マイクがどれくらい静かかは、思っている以上に効いてくる部分です。

今回検証するRØDE NT1シグネチャーシリーズは、メーカーが「世界一静かなスタジオコンデンサーマイク」を名乗る1本です。同じRØDEのオーディオインターフェースAI-1と組み合わせて、その静けさが配信の音声にどれくらい表れるのかを検証しました。

機材に詳しいウマヅラ
機材に詳しいウマヅラ
世界一静かなマイクは一体どれくらい静かなのか!実際に録って、波形と耳で確かめてみました。

RØDE NT1シグネチャーシリーズ(コバルト)とSM6ショックマウント
RØDE NT1シグネチャーシリーズ(コバルト)とSM6ショックマウント

この記事の要点

  • 無音30秒のノイズフロアはRMS -59.9 dBFS。波形はほぼ一直線で、編集でのノイズ処理の手間が減ります
  • ゲインを上げればささやき声もピーク-12.2 dBFSまで届き、ノイズはほとんど増えませんでした
  • 音色は味付けのない素直な音の傾向(10cmで約1.7 dB増)
  • NT1本体とSM6ショックマウントで合計995g。アームやスタンドは耐荷重を確認してから選びましょう

今回試した機材

NT1シグネチャーシリーズ コバルトの正面。グリル直下にマイクカプセルの位置を示すゴールドドットが付く
正面
NT1シグネチャーシリーズ コバルトの側面。ネジが1本見える面
側面
NT1シグネチャーシリーズ コバルトの背面。RØDE NT1とMADE IN AUSTRALIA、P48の刻印が入る
背面
項目NT1シグネチャーシリーズ
種別1インチ口径のコンデンサーマイク
指向性単一指向性(カーディオイド)
音質感度 -32 dB(re 1V/Pa)/最大SPL 142 dB/セルフノイズ 4 dBA
電源・接続ファンタム電源(48V)・XLR
付属品SM6ショックマウント(ポップフィルター付き)・XLRケーブル6m
重量・保証313g・10年保証(要製品登録)

このマイクはXLR接続なので、PCにつないで使うにはオーディオインターフェースが必要です。すでに持っている人はマイクだけ買えば始められますし、持っていない人はAI-1(RØDEのオーディオインターフェース)をあわせて用意すれば揃います。

📘 用語メモ|コンデンサーマイク

小さな音まで拾えるタイプのマイク。動作にはファンタム電源(48V)という電源の供給が必要になる。

セットアップ:アームを用意すればすぐ録れる

NT1シグネチャーシリーズは、30年以上続くNT1シリーズで初めてカラーバリエーションが用意されたモデルです。今回検証に使用したのはコバルトです。派手な青ではなく、アルミ筐体になじむ落ち着いた発色でした。

機材に詳しいウマヅラ
機材に詳しいウマヅラ
届いた箱を開けたとき、思っていたより落ち着いた色で驚きました。マイクではあまり見かけない色だと思います。

アルミ筐体のNT1シグネチャーシリーズ コバルト。NT1のロゴとMADE IN AUSTRALIA、P48の刻印
アルミ筐体に落ち着いた発色の塗装。
NT1のロゴとMADE IN AUSTRALIA、P48の刻印が見える

箱の中身は、NT1本体、ポップフィルター付きのショックマウントSM6、そしてマイクとオーディオインターフェースをつなぐ6mのXLRケーブルです。AI-1側にはUSBケーブルが付属します。マイクを固定するアームかスタンドを用意すれば、すぐに録り始められる構成でした。

📘 用語メモ|ショックマウント

マイクを台座に固定する部品。デスクを軽く叩いたときの振動やアームの揺れなどがマイクに伝わらないよう、ゴムなどで吸収する。

箱の中身。NT1本体、SM6ショックマウント、6mのXLRケーブル
箱の中身。NT1本体、SM6ショックマウント、6mのXLRケーブル

ただし、Windowsで使うなら、使い始める前に見ておきたい設定が1つあります。検証中、録音しても波形がまったく出ないことがあり、Windowsの「オーディオの強化」をオフにしたら録れるようになりました。原因はこれだったようです。

設定はサウンド設定のマイクのプロパティから切り替えられます。一度オフにしても、アップデートのタイミングでオンに戻っていることがあるので、録れないときはまずここを確認してみてください。

Windowsのサウンド設定で「オーディオの強化」をオフにした画面
Windowsのサウンド設定で「オーディオの強化」をオフにした状態

AI-1をつないで録り始めるまで

今回の検証で使用したAI-1は、入力が1つのオーディオインターフェースです。48Vのファンタム電源を供給でき、24 bit/96 kHzに対応、ヘッドホンアンプも入っています。付属品はUSBケーブルとAbleton Live Liteです。

「XLR接続って、配線とか設定が難しそう…」という印象があるかもしれません。ですがAI-1についているのは、ゲインとヘッドホン音量を調整するノブ2つと、48Vのランプだけです。ノブを押し込むと、自分の声を直接聴けるダイレクトモニタリングに切り替わります。実際に使ってみても、接続して音量調整するだけで録音を始められました。

AI-1の操作系。ゲインとヘッドホン音量のノブ2つと48Vランプ、信号LED
AI-1の操作系はゲインとヘッドホン音量のノブが2つだけ。
48Vランプと信号LEDが点灯している

ただ、AI-1をつなぐと、OBSやWindowsのデバイス一覧には「マイク」ではなく「ライン (RODE AI-1)」という名前で現れます。「マイク」が見つからなくても、「ライン (RODE AI-1)」を選べばそのまま使えます。

OBSのデバイス一覧に「ライン (RODE AI-1)」と表示されている画面
OBSのデバイス一覧には「マイク」ではなく「ライン (RODE AI-1)」と表示される

「世界一静か」は本当か

RØDE NT1シグネチャーシリーズのメーカー公式ページには “the world’s quietest studio condenser microphone”(世界一静かなスタジオコンデンサーマイク)と書かれています。

本当に世界一静かなのでしょうか。それを確かめられたら理想ですが、他のマイクをまったく同じ条件で測るには、無響室のような環境が必要になります。

そこで今回は、セルフノイズ4 dBAという公称値が、一般的な配信環境で収録した音にどれくらい表れるのかを測ってみました。

📘 用語メモ|セルフノイズ

マイク自身が発する「サー」というノイズの大きさ。数値が小さいほど静かなマイク。

テスト条件|共通環境

部屋の条件:エアコンを止め、PCのファンを抑えた状態
ゲイン位置:AI-1のゲインノブは1時方向を基準(ささやき声の検証のみ2時方向)
マイク距離:20cm(距離比較の章を除く)
掲載音声:すべて前後カットのみ・音声処理なし

※ここで測っているのは「NT1 + AI-1 + 部屋」を合わせた全体のノイズです。カタログ値4 dBA(マイク単体・無響条件)と同じ条件で測り直したものではありません。

ノイズフロア実測:無音30秒がほぼ一直線

エアコンを止め、PCのファンを抑えた部屋で30秒間の無音状態を録音したところ、平均レベルはRMS -59.9 dBFSで、波形はほぼ一直線でした。声の後ろがここまで静かだと、編集でノイズ処理をかける手間そのものが減ります。

機材に詳しいウマヅラ
機材に詳しいウマヅラ
-59.9 dBFSと言われてもピンとこないと思います。感覚としては、ヘッドホンで聴いてもノイズはかすかに分かる程度で、音量を上げないと気づけないレベルでした。

無音30秒を録音した波形。ほぼ一直線でノイズはごくわずか
無音30秒を録音した波形。ほぼ一直線で、ノイズはごくわずか

ささやき声:小さな声を持ち上げてもノイズが出ない

ささやき声などの小さな音を、配信で聞き取れる音量にするには、ゲインを上げることになります。ふつうは声と一緒にノイズも大きくなりますが、このマイクではそれがほとんど起きませんでした。

📘 用語メモ|ゲイン

マイクから入ってきた音を、どれくらい大きくして扱うかの設定。AI-1では本体のノブで調整する。

ゲインノブを基準の1時方向から2時方向に上げたところ、ささやき声でもピークが-12.2 dBFSまで届きました。これは配信で十分使えるレベルの音量です。それでもノブにはまだ余裕が残っていました。

AI-1のゲインノブを2時方向まで上げた状態
ゲインノブを2時方向まで上げた状態。今回の検証では1時方向を基準にした

小さな音に強い:ASMRにも向くが、口の音まで拾う

小さな音までしっかり拾うので、ASMRのように音そのものを聴かせたいときにも向いています。

実際にささやき声を録ってみると、声と一緒に口の中の湿った音(リップノイズ)まで入りました。声を使うASMRなら、収録前に水を一口飲んでおくか、編集でノイズ処理をかけたほうがよさそうです。

どんな音で録れるか

音色と距離:素直な音で、低音は近づければ足せる

同じ原稿を、雑談と実況の2通りを想定した読み方で録音し聴き比べたところ、味付けのない素直な音という印象でした。

公式はこのマイクの音の特徴として、warm(温かい)とsilky(なめらか)を挙げています。silkyのほうは、サ行が耳に刺すように響くことがなく、たしかになめらかに聞こえました。一方でwarmにあたる低音の厚みは、普通かやや軽めです。ラジオDJのような太い声ではなく、ナレーションに近い素直な声で録れました。

ただしこれは今回検証した声での印象で、低音成分の多い声の人では変わる可能性があります。声を太く聞かせたいときは、マイクに近づけば低音を足せます。

10cm・20cm・30cmで録り比べると、マイクに近づくほど低音が強調されました。近接効果と呼ばれる現象で、10cmでは30cmのときと比べて低音が約1.7 dB増え、声が太くなります。

ただし10cmはピークが-0.03 dBFSまで上がり、あと少しで音割れするところでした。反対に30cmまで離すとピークは-12.4 dBFSまで下がり、そのぶん周りの音や雑音が入ってきます。中間の20cmはピーク-6.2 dBFSで、音割れの心配も周りの音の入り込みもなく、いちばん扱いやすい距離でした。

距離10cm

距離20cm

距離30cm

また、人により誤差はありますが、親指から小指まで大きく広げた幅がだいたい20cmなので、目安として使えます。

機材に詳しいウマヅラ
機材に詳しいウマヅラ
試しに親指から小指まで広げた自分の手を測ってみたら、ちょうど20cmでした。メジャーを出さなくても毎回同じ距離に置けるので、覚えておくと便利です。

マイクとの距離約20cmと、大きく広げた手の幅の比較
マイクとの理想距離(約20cm)は、手を大きく広げた幅とほぼ同じ

ポップフィルター:付属品だけで息の音を約7.8 dB抑えられた

パ行やバ行の多いフレーズで比べると、ポップフィルターなしでは録音できる上限まで達してしまいました。ありでは-1.7 dBFSに収まり、息が当たったときの「ボッ」という音を約7.8 dB抑えていました。付属のポップフィルターは、付けたままにしておくと安心です。

ポップフィルターあり

ポップフィルターなし

指向性:正面で話せば周りの音を抑えてくれる

正面・横90度・背面の3方向から、同じ音量で話して録り比べました。

横に90度ずれると少しこもり、背面に回ると鼻をつまんだような声になりました。カーディオイドの指向性がはっきり効いています。

正面・横90度・背面の聴き比べ

マイクが口の正面に来るように置いておけば、それだけで周りの音を抑えてくれます。

なお、正面はグリルの下に金色の丸が付いている面です。この丸がマイクカプセルの位置を示しているので、声はこちら側に向けます。RØDE NT1の刻印が入っている面は裏側なので、設置するときに間違えないようにしてください。

ただし、カーディオイドが抑えてくれるのは正面から外れた方向の音です。デスクの上で鳴る音はそのまま入ってきます。
静音タイプのキーボードでも打鍵音はしっかり乗ったので、打鍵音の大きいメカニカルキーボードならノイズゲート(小さい音を自動でカットする機能)を入れておくと安心です。

📘 用語メモ|カーディオイド

マイク正面の音をよく拾い、背面や側面の音を小さくする単一指向性の代表的なパターン。

配信での使い心地はどうか

モニタリング:遅延は感じないレベル

AI-1のダイレクトモニタリングで自分の声を聴きながら話しても、遅延はまるで感じませんでした。イヤホンで聴いてみると、音量ノブを4分の1も回さないうちに十分な音量になりました。ヘッドホン出力にはかなり余裕があります。

ただ、このマイクは普段は聞き流している音まで返してきます。

機材に詳しいウマヅラ
機材に詳しいウマヅラ
検証中、昼食後のお腹の音までしっかり拾っていました。自分の声や生活音がそのまま返ってくる感覚は、最初は違和感がありましたがしばらくすると慣れます。

大声・叫び:ゲインを一段下げておくと安心

大声と手を叩く音では、波形が録音レベルの上限に繰り返し達しました。耳で聴いて歪みは感じませんでしたが、上限に当たっているのは事実です。叫ぶ場面が多い配信なら、ゲインを普段より一段下げて余裕を作っておくと安心です。

手を叩いた音の波形。録音レベルの上限に繰り返し張り付いている
手を叩いた音の波形。録音レベルの上限に繰り返し張り付いている

VSeeFace+OBSのVTuber構成で10分の模擬配信も実施。気になる音ズレや音落ちはなく、安定して録れていました。

配信で使うぶんには、ゲインを合わせてしまえばあとは触らずに済みそうです。

995gを支えられるアームを選ぶ

このセットで唯一つまずきそうなのが、アームやスタンドの耐荷重です。マイク本体が313g、付属のショックマウントSM6が682gで、合わせて995gあります。500mlペットボトル2本分と考えると、見た目以上の重さです。

今回は手持ちの耐荷重3kgクラスのガススプリング式ブームアーム(軽い力で動かして好きな位置で止められる方式)に載せて確認しましたが、垂れや傾きはなく安定していました。耐荷重に余裕があるガススプリング式なら、重さはあまり気にしなくて良さそうです。

RØDE純正のブームアームPSA1+も耐荷重1.2kgまで対応しているので、995gのNT1+SM6を問題なく支えられます。

どのアームでも、SM6を取り付ける先端の関節(マイクの向きを決める部分)はネジをしっかり締めておく必要があります。締めておけば保持力は十分で、話しているうちに角度がずれることはありませんでした。

RØDE純正のブームアームPSA1+にNT1シグネチャーシリーズを設置した状態
RØDE純正のブームアームPSA1+に設置したイメージ

SM6は、ショックマウントとポップフィルターがセットになった部品です。この1つで振動対策と吹かれ対策が完結するので、設置のときに別の部品を用意する必要がありません。

ポップフィルターは取り外せますが、RØDEのラージダイアフラム系マイクに合わせた設計です。別のポップフィルターを試したい人は、自分で用意することになります。フィルター部分はガーゼ状の布製で、耐久性は今回の期間では判断できませんでした。

デスクスタンドを使う場合も、耐荷重の確認は同じです。なお、RØDEからは耐荷重1.5kgに対応した新しいデスクトップスタジオアーム「DS3」が発表されています。ボールヘッドでマイクの角度を調整できるタイプで、国内では9月末の発売が予定されています。執筆時点では国内未発売で、実機は試していないため、耐荷重はメーカー公称値です。

RØDEのデスクトップスタジオアームDS3。ボールヘッドでマイクの角度を調整できる
RØDE純正の新しいデスクトップスタジオアームDS3。
ボールヘッドでマイクの角度を調整できる(メーカー提供画像)

まとめ

こんな人におすすめ

検証してみて、このマイクが向いていると感じたのは次のような人です。

  • 録音や動画投稿、ポッドキャストでノイズ処理の手間を減らしたい人
  • ナレーションや朗読など、声そのものを聞かせる配信をする人
  • ASMRやささやき系のコンテンツを録る人
  • 初めてのXLRマイクに必要な機材を一式揃えたい人

逆に、ゲインや設定を一切気にしたくない人には、USBマイクのほうが気楽に扱えます。生活音が入りやすい部屋も得意ではありませんが、窓を閉める、カーテンを引くといった一手間で結果は変わります。

初めてのXLRマイクとして扱いやすい1本

「世界一静か」を自分の環境で確かめきることはできませんでしたが、そう名乗るのが分かるノイズの少なさでした。無音の30秒がほぼ一直線で、ささやき声を録ってもノイズが混ざりません。声の後ろが静かなぶん、編集でのノイズ処理はかなり減らせるはずです。

価格も手に取りやすく、NT1シグネチャーシリーズは23,980円です。AI-1の18,700円と合わせても4万円台前半に収まります(ともに税込・執筆時点)。マイク側はショックマウント・ポップフィルター・XLRケーブルまで付いてくるので、あとはアームを用意するだけで録り始められます。

マイクは口の正面に20cm、ポップフィルターは付けたまま、部屋の生活音は録る前に減らしておく。この3つを押さえておけば、あとは声を出すだけで安定して録れます。初めてのXLRマイクとして選ぶなら、扱いやすい1本だと思います。

機材に詳しいウマヅラ
機材に詳しいウマヅラ
XLRマイクは配線も設定も大変だと思っていたのですが、導入のハードルは思ったより低かったです。最初の1本にXLRを選びたい人にも勧められます。

クレジット

今回検証した機材が気になった方は、以下のメーカー公式サイトをご覧ください。

>>RØDE NT1シグネチャーシリーズ メーカー公式サイト
>>RØDE AI-1 メーカー公式サイト

また、国内総代理店である銀一のオンラインショップからも購入できます。

>>NT1シグネチャーシリーズ コバルト(銀一オンラインショップ)
>>AI-1(銀一オンラインショップ)

機材協力:銀一株式会社(RØDE国内総代理店)
レビュー:ウマヅラ

この記事を書いた人

ストマガ編集部

「ストリーマーマガジン」は、VTuberや配信クリエイターに興味がある方、ご自身でも活動されている方、そしてこれから配信をはじめてみたい方を応援するWebメディアです。 配信初心者さんからベテランさんまで、幅広く楽しめる情報をお届けします。

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